実際の学習法

 

なぜ、日本人が話せないかをもう少し具体化してみます。

 

例えば、中学校でI have a pen. と習います。「これは、肯定文です。否定文ではI don't have a pen. 疑問文ではDo you have a pen?と言い・・・」と習いますが、ここで重要なのは、I have …、I don't have … 、Do you have …で何百、何千という文が作られ、これらが日常会話のいたるところで使われているということです。ネイティブでこれらを何日にもわたって使わない人は、多分世界中に一人もいないでしょう。つまり、これは英語の中でも最も頻度の多い言い方の一つで、これがある程度自由に使えないと、日常会話はあまりスムーズにいきません。

 

かといって、このように中学校の1年生で習うことが、ほとんどの英語学習者が自由に使えるかと言うとそうでもありません。場合によってはWould you mind if I keep waiting for her here? (ここで彼女を待っていても構いませんか)みたいな複雑な文を知っている人でも簡単なことが言えないことが少なくありません。

 

これは、中学校一年生の時、これらを使って「自分で文章を作って声に出してみる」練習をあまりしていないためです。

 

ここで、重要なのは、「自分のこと」としてシュミレーションしてみることです。

例文を暗記しても、残念ながら早ければ数日後、遅くても数か月使わなければ忘れてしまいます。

それに対し、自分で、自分が使っているつもりで自分で文を作った経験は、思ったより、残っているものです。

 

この例のように、日本人が話せないことの理由の一つに「学んだことを忘れてしまう」もとが挙げられます。せっかく苦労して覚えても、忘れてしまっては使えません。

 

また、学ぶにつれて多くの混乱が生じます。

「I have a pen.って何か単純すぎるなあ。これでいいのかなあ?」「Do you have a pen?変だなあ。疑問文の期はanyが付くんじゃなかった?でもsomeも疑問文でも使える場合があったなあ、確か。」などと考えているうちに、例えば相手が「誰か書くものお持ちですが?」と聞いたときに、相手もあまり間が空くと、他の人に聞いたりします。

 

つまり、うろ覚えを減らすか、うろ覚えでも「エイ!」と使ってみる覚悟が必要です。相手に失礼にならないか気にする学習者も多いですが、現代人が最も大事にするのは「情報の正確さ」や「スピード」などで、必ずしも「丁寧さ」ではありません。例えば、つたない英語を話す人がいてそれに相手が無礼だと怒り出した、といったことを見たことはこれまで一度もありません。われわれは皆学習者であり、勉強する態度は大事としても、自分の英語を卑下したり、英語が下手だと価値がない、などと思う必要は全くありません。

 

さて、実際の英語の学習法として次の2つをお勧めします。

 

①基本文法と基本単語を学ぶ

 基本文法は、中学校までプラス高校の最初のころのもので、会話に必要なものの9割以上をカバーできると思います。

 会話は、相手の言っていることがわかり、自分の言いたいことを言える、ことが全てです。

 相手の言うことは、もちろんレベルがピンからキリまでありますが、一般に言われるように日常会話で話されることは、シンプルで使われる単語も限られます。文法で押さえる項目も限られており、私を文法が嫌いだから文を暗記します、という人は、おそらく何十倍も苦労すると思います。

 日本人は、文法大嫌いと言う人もいますが、例えばサッカー選手であれば嫌いでもルールに乗っ取らないと試合ができません。相手もルール通り話すので、ルールを覚えておくと相手の言っていることが理解しやすくなります。

 受験勉強での文法項目を全て押さえるのは大変ですが、中学卒業+αであれば、結構楽しく「知的満足度」も得られます。

 基本単語は、実は日本語の中にカタカナ英語として多く(千以上?)取り入れられており、ドッグ、キャット、ホワイト、テーブル、カップなどの日常的なものから、ディスカッション、プライベート、ネゴシエーションなどの複雑なものまで多く入っていますので、例えはロシア語の単語を一つづつ覚えていくよりずっと楽です。

 また、電子辞書は、昔の人からすれば魔法の辞典です。辞書の最大の弱点は引くのに時間がかかることですが、電子辞書はそれを何分の一にもしました。

 単語を知らないと話せません。かといって恐るるに足らず、何度も同じ単語を引いていると誰でも覚えます。

 

②自分で話してみる機会を日常的に作る

 言葉は、会話するために作られたものなので、会話をしないと上手になりません。

 ただ、会話をしないでも上手になる方法が一つあります。

 言葉は、会話のために発明されたと思いますが、人々は言葉を「考えるため」に使い始めました。「どうしようかな。困ったな。このままじゃ課長に怒られる。何とかしなっきゃ。あ、そうだ、A君にそうだんしてみよう。あいつなら、結構この手のやつ経験あるし・・・」などと言葉考えます。

 考えてみると、現代人は、相手と話している時間より自分で言葉で考えている時間の方が長いのではないでしょうか。

 英語でのモノローグをお勧めします。

 これは、大変な効果があります。

 英語を話せない場合、多くの場合「慣れ」「単語不足」「その言い方でいいか自信がない」の3つがあります。自信がないのは、基本文法がわかり「会話で使われる例文」をいくつかこなしていくと、「だいたいこの辺で言えば通じるし、変でもない。」という「安全圏」がわかってきます。

 問題は、「慣れ」と「単語不足」です。これらには「回数」が欠かせません。回数さえこなせは、誰でも英語をある程度滑らかに話せるようになります。

 

 これまで学習者は、この回数を確保することに苦労してきました。人によっては声に出して読む「音読」を何百回繰り返したら、CDを何度も聞いたり、聞きながらその通りに声に出していく「シャドーイング」をやっている方もいると思います。NHK教材を毎月購読・視聴し実践している方もいると思います。

 

 ただ、続かなかった方も多いのではないでしょうか。

 そこで、この方法をお勧めします。

 文法項目を学んだり、覚えたい例文が出てきたら、その辺りの練習をモノローグで行います。

 例えば、現在進行形を学んだら、自分のことを言ってみます。

 私は、今この本を読んでいる。

 この本はおもしろい。

 私は、これを先週買った。いつも行く本屋で。

 それ以来毎日読んでる。

 私はこの本が好きだ。

 なぜなら、この本はためになるからだ。

 あまりこういった本はない。・・・

 

 こういったことを言いたいとき、いくつかのポイントで悩むと思います。

 ・「この本はおもしろい」はどういうの? interestingなどを使うの?

 ・「いつも行く本屋」ってどういうの? 関係代名詞とかいうやつ使うの?使わなくても言えるの?

 ・「それ以来」ってどういうの? 「毎日読んでいる」って現在進行形でいいの?

 ・「ためになる」ってどういうの?

 ・「こういった本はない」ってどういうの?

 

ここで、最も大事なことは、「自分で何が言いたいことか」と言うことです。ほかの教材がなぜなかなか続けられないかは、所詮他人事だからです。人間は自分ことに一番興味があり、集中できる生き物です。

 

そして、ここで大事なことは、「何が言いたいのに言えないか」を自覚することです。哲学めいていますが、自覚なしに学習効果は薄いようです。自覚するは、すべてをその時解決しなくても、いつか「あれっ、これ使えばこの間の言い方できるんじゃない?」そして、こういった自分の発見が積み重なっていくと、いつか「これも言える」「あれも言える」という状態になります。

 

「おもしろい」「ためになる」などを辞書で引くのもおすすめです。

現代の辞書はよくできており、例文も正しいものが豊富です。「おもしろい」などは、日本語でもいろいろなニュアンスがあり(ジョークから、英語はおもしろい、まで)、どう違うんだろう、と考えることもとても学習のためになります。

 

このように、自分言葉で考えることはどこでもできます。

例えば、散歩しているとき、I'm waliking with my dog. から始めて、

この犬は、いつ買った。誰から買った。もらった。

この犬の名前は○○。

この名前を選んだのは、○○だ。

この名前の由来は・・・ 

 

「由来? 何ていうんだろう」

こういったことは「試行錯誤」です。AIコンピューターが碁の世界で人間に勝てるようになったのは、人間が全てをインプットするのではなく、AIコンピューター自身が試行錯誤しながら勝つ方法を考えていくようになったから、だそうです。

 

考えてみるのと、赤ちゃんが言語を習得するのも試行錯誤の末と言えそうです。赤ちゃんが最初から正しい文を与えられるのではく、1つの単語から、その羅列で、少しずつ言葉になっていきます。

 

モノローグはいつでもどこでもできます。

少しずつ、複雑なことが言えるようになります。

発音は、通じなかったら少し気を付ける程度で、十分通じます。いろいろな国の人が、いろいろな国流の発音で話しているのが英語です。(日本人の英語は、皆さんきれいな方だと思います。)

基本文法を学びながら、言いたいことが何か、それに足りない単語を増やしていく。

文例集などをたまに参考にする。(依頼するときの文、相手の意向を聞く文などは、Could you ~、Would you  ~、Can you ~、Will you ~、May I ~、Could I ~、Can I ~ のどれか(どれでも)で足りる場合も少なくありません)。要領と割り切りのいい人であれば、1週間程度の旅行では、英語の基本ルールの中でのさらにコアの基本ルールと上記のような超よく使われる表現を覚えると、添乗員なしでも旅行ができます。日本に来ている外国人達のように。